イチジクの花びらが舞う丘で、あるいは意味をなさない文章の集まり。
私はイチジクの花びらが舞う丘の教会で結婚式を挙げる、という誓いを立てた。
甘い香りに包まれた式は、さぞ素敵で夢としか思えないような光景だろう。
いつになったらその景色が見られるだろうか。
イチジクの香りは未だ届かない。
その代わり、煙草を吸ってみたい、という思いがある。
ガツンとニコチンの匂いがくるタイプのものではなくて、甘くてスーッという香りのするもの。
ただ、法律を破るわけにはいかない。
私はどうしたらいいのだろう。
ひとまず家の裏の精神科医に尋ねてみた。
「貴女の言いたいことがわかりません。どうせ食パンに生えた黒カビでも食べたのでしょう」
彼は白パンを食べなさい、と僕に告げた。
冗談じゃない。
食事は決して抜くべきではない、そう元OLの自衛隊員に教え込まれたからだ。
だけども白パンはレーズン入りしか売っていない。
入っていないものはこの町から駆逐された。
今日も今日とて工場ではパン生地にレーズンが埋め込まれる。
ガシャゴン、ガシャゴンと音を立てて。
たまには氷砂糖を入れたっていいだろう。
虹色の作業服を着て、俺はそう独り言ちた。
パルプの海に飛び込む。
今日、工場から出る煙は、きっと甘い香りだろう。