杏奈語IA(文法)
※長いです(約9,000字)
望月杏奈のSSを書くにあたって望月杏奈の言語体系を自分なりに理解しておく必要があったので自分用にまとめたテキストを、せっかくだし色々追記してこの場で公開することにしました。
なお、本記事は「望月杏奈のSSを書く」ということを目的にしているので、そのために何かと都合のいいようにまとめていきます。そのため、これが絶対的に正しいという信念を伴った主張というわけではなく、あくまで「都合のいい」解釈であるということを断っておきます。
【注意】
GREE版ミリオンライブの親愛度セリフをバンバン引用しているので、ネタバレとかが嫌な人はブラウザバックしてください(グリマスは終わったしネタバレも何もって感じですけど)。
以降、節『Rule2について』の最後までは「ですます調」から「である調」へ変わります。
導入
・定義
1.「杏奈語的省略」とは助詞の省略であり、省略された助詞の代わりに読点または三点リーダが挿入されているものを指す。(※後述するが、ややこしいものがいくつかある。)
2.「杏奈語的省略」が行われることを、「杏奈語的に省略される」という。
杏奈語的省略について、以下に示す二つのRuleが考えられるというものが本記事の内容である。
Rule1:親愛度によらず助詞を省略する。どれを省略してどれを省略しないかには明確な区分がある。
Rule2:親愛度高めの台詞では省略の範囲がより広がる。
以下、この二つのRuleについて説明する。
なお、今後出てくる台詞の直後には括弧書きで台詞の出典を示してあるが、「(親愛度xxx)」としか書かれていないものが多数あることを述べておく(営業だったり何だったりは区別していない)。
Rule1について
この節に示す1から4の規定文では、特に断らない限り、親愛度が高めでない台詞を(つまりRule2の対象にならない台詞を)対象としている。
規定1.「は」は杏奈語的に省略される。
この省略は親愛度如何に関係なく発生する。
「杏奈…ダンスの振りつけ…考えてみたよ…。プロデューサーさん、見て…ほしい、な…」(親愛度700)
「杏奈、今日のお仕事…すごく楽しみにしてたよ。だ、だから…早く行こ…プロデューサーさん」(親愛度600)
「杏奈、服についてるウサ耳をさわるとホッとするの。プロデューサーさんもホッとして…いいよ?」(親愛度700)
「さっき…ファンレターもらったの。杏奈の歌、ちゃんと届いてるんだね…。すごく、うれしい…」(営業)
この四つはかなり分かりやすい杏奈語的省略である。「これは普通にやる省略では」という指摘があるかもしれないが、先述の通り、本記事ではSSを書くために都合のいいようにルール化していくため、定義に沿うものは基本的に「杏奈語的省略」とみなす。
「自己、アピール……? えっと……杏奈は、お話が苦手……。……けど、歌は、好き……。たくさんの人の前で歌うのは……ちょっと、恥ずかしい……。でも、みんな笑顔になってくれるから……杏奈のこと、見てくれるから……とても……好きだよ。……杏奈の歌、色んな人に届けられたら……いいな♪」(アピール)
「誕生日プレゼント? …んと、…ううん…新しいゲームソフトは、いらない。杏奈は…プロデューサーさんと一緒にいられるのが、一番うれしい…から。」(誕生日2014)
この二つは省略が起きていない。まあ、一つ目の方は省略していいと思うが、初期の台詞なので許容の範囲とする(これ以降にも触れるが、最初期の台詞はまともに相手をしていない)。
言語学的には、助詞「は」のことをtopic makerと呼ぶ(ソースは†東大†の日本語教育センター)。杏奈語的には、「は」で提示するtopicと主語が一致しているときには「は」を(ほぼ全部)省略し、「は」で提示するtopicと主語が一致しないときには「は」を省略しない傾向があるように思われる。
実際、先に示した例で杏奈語的省略が起きているものはいずれもtopicと主語が「杏奈」で一致する。一方で、誕生日プレゼントの話はtopicが「新しいゲームソフト」、主語が「杏奈」となり、両者が一致しない。
「イェーイ! みんなーっ! 今日は、杏奈の誕生日ライブに集まってくれて、ホントにありがと~! こーんなにたくさんの人達に祝ってもらえて、杏奈とっても幸せだよ~! 今日は、最高のステージにするからねーっ!」(誕生日2017)
一文目と三文目においてはtopicが「今日」、主語が「杏奈」なので、省略は起こらない。
二文目ではtopicと主語がともに「杏奈」なので「は」が日本語的に省略可能になる。
これはON杏奈の台詞なので読点も三点リーダもついていない。つけてもいいとは思うが、定義を無視すると話がややこしくなるので、これは杏奈語的省略ではないということにする。
「んと…プロデューサーさんと杏奈は最強のペアで…協力プレイも無敵、だから。
もっと、一緒にいられたら……いいな。」 (親愛度400)
「だから」という接続詞で二文を繋いでいるわけだが、主文(「だから」に続く文)の主語は「杏奈」であることを思えば、topicは「プロデューサーと杏奈」であり、両者は一致せず、省略は発生しない。
規定2.「が」は杏奈語的には省略されないが、日本語的には省略されることがある。
「普段は恥ずかしくて言えないけど、今ならビビッと言える気がする! 杏奈、プロデューサーさんのことが大好きだよ♪」(親愛度500)
「あの…国語の作文で……プロデューサーさんのこと、書いたよ…。「大切な人」ってテーマで…すぐに、顔が思い浮かんだんだ…。」(親愛度800)
「 ……びっくり、した。杏奈がトップアイドルなの、夢じゃないよね…? ……よかった。プロデューサーさん、ありがと……だよ♪」(トップアイドル)
実際に省略されていない台詞が上に示したもの。
探してみると「が」が省略されている場合もある。いくつか見てみよう。
「…………ん。ちょっと…おなかすいた……。おやつにしよ……?」(親愛度300)
これは一般的に発生しうる省略。読点も三点リーダも挿入されていないので、杏奈語的省略ではない。
「キャンプ…楽しい、ね…。杏奈…ワクワクして…目、覚めちゃった…。プロデューサーさん…あそこにあるの…月…? …下弦の、月……ん、キレイ…♪」(「朝明の月 望月杏奈」カードテキスト)
読点が挟まってはいるが、これは文章を読みやすくするための読点であって杏奈語的省略のサインではない(と考えた方が、都合がいい)。
「ひぁあああ!? ぷぷぷ、プロデューサー、さん…っ! …あ、杏奈の、手に…タコ…か、からまって…。コレ…ニュルニュル、って…杏奈、ダメ…ムリ、だよ…!」(「たこ焼き修行中! 望月杏奈」カードテキスト)
これはただ混乱してるだけ。
「ステージ、大きいと…いつもより、緊張する、けど…応援してくれる、みんなも…大きく感じる、ね…。杏奈…ビビッと…。頑張りま~すっ♪」(「THANK YOU for SMILE 望月杏奈」カードテキスト)
これは杏奈語的省略であると思われる……が、今回は例外であるとみなす(同用法のテキストが少ないため)。よって、SSを書く上では「が」は杏奈語的に省略されないものと考えてよい。
規定3.「に」は杏奈語的に省略されず、日本語的にもあまり省略されない。
「あ、ちょうちょ…。……プロデューサーさんの頭の上にとまった。……かわいい、ね?」 (親愛度400)
「プロデューサーさん杏奈の歌、みんなに届いてるかな?」(営業)
これらはそもそも日本語的にも省略されない。
「に」の省略が発生しているテキストとしては以下のようなものがある。
「あ…! あ、ありがと…あのね、杏奈ね…朝、目を覚ましてからずっと、プロデューサーさんのお誕生日おめでとうを楽しみにしてた…! うれしくて、フワフワする…。」(誕生日2014)
「えっと……、道、迷わないように……、手、ぎゅってしてい……ぃ…?」 (親愛度400)
一つ目は読点が挿入されてはいるが、これは文を読みやすくするためのものであり、あくまで一般的に行われる省略であると考える(例:「メルト」の唄い始め)。
二つ目の省略は一つ目と似たような構造をしているが、こちらはRule2による省略と考えた方が都合がよい(後述)。
規定4.「を」は杏奈語的には省略されないが、日本語的には省略されることがある。
「あ…! あ、ありがと…あのね、杏奈ね…朝、目を覚ましてからずっと、プロデューサーさんのお誕生日おめでとうを楽しみにしてた…! うれしくて、フワフワする…。」(誕生日2014)
「百合…じゃなくて、lilyknightさん。これからも一緒に王都と世界を護ろうね。 あと、レア装備のプレゼントも…ありがと、です…♪」(誕生日2015・百合子に対する返答)
「ジャジャ~ン、今日は音ゲーを持ってきたの! プロデューサーさん、一緒に遊ぼ~♪」(親愛度500)
「杏奈、服についてるウサ耳をさわるとホッとするの。プロデューサーさんもホッとして…いいよ?」(親愛度700)
「プロデューサーさん、杏奈を気づかってくれるけど…杏奈も、気づかいたい…。 あのね…無理はしちゃ、ダメ…なんだよ?」(親愛度600)
「を」の省略が発生しているテキストとしては以下のようなものがある。
「あ…えっと…。言いたいこと、いっぱいあったのに……、顔みたら、忘れちゃった……。」(親愛度200)
「杏奈、頑張れるから…。もっともっと、頑張るから……。だから、杏奈のこと見てて、ね…。」(親愛度900)
「…学校の宿題、むずかしい…。プロデューサーさん、杏奈のわからないところ教えてくれる…?」(あいさつ)
これらは読点も三点リーダも挿入されていないので杏奈語的省略ではなく日本語的省略である。
「……杏奈、14歳……。……歌、好きです……。あと……かわいいものも、好き……。……杏奈、まだ、何もできないけど……かわいいアイドルになるために、いっぱいがんばるから……プロデューサーさん……杏奈のこと……よろしく、です……」(自己紹介)
「自己、アピール……? えっと……杏奈は、お話が苦手……。……けど、歌は、好き……。たくさんの人の前で歌うのは……ちょっと、恥ずかしい……。でも、みんな笑顔になってくれるから……杏奈のこと、見てくれるから……とても……好きだよ。……杏奈の歌、色んな人に届けられたら……いいな♪」(アピール)
これらは例外的に杏奈語的省略でないとする(いずれも最初期の台詞)。
ところで、初期の台詞ではなく、かつ杏奈語的省略の定義を満たす「を」の省略がある。それは、たとえば以下のようなものである。
「もうちょっと……あと、ちょっといけるかなって、思うから。…杏奈の背中、支えてくれる……?」(親愛度800)
「プロデューサーさんがくれたメール…よく、読み返してる。杏奈の大切な、宝物…だよ。」(親愛度900)
「プロデューサーさん…怪獣さん、とってくれて、ありがとう…。杏奈…これ、欲しかったから…すごく、嬉しい…です。…大事に、する…ね」(「素直な笑顔 望月杏奈」カードテキスト)
これらはRule2による省略であると解釈する。
とりあえず、簡単のため、Rule2の外においては「を」の杏奈語的省略は起こらないものと規定しよう。
「あのね…杏奈…チョコ、作った…よ…。かわいく、ラッピングできた…から…みんなに、あげる…ね…。 …よろこんで…くれる、かな…すー…」(「あまいまどろみ 望月杏奈」カードテキスト)
ちなみに、これも杏奈語的省略の定義を満たすが、これは杏奈の寝言という設定なので例外的に扱う。
Rule2について
この節では、親愛度が高いと考えられるいくつかの台詞において、前節で示した四つの規定を超えた杏奈語的省略が行われることを確認する。
「あ、あのね……帰り道、暗くて…ちょっと、怖いから……手、つなぎたい、です…。ダメかな…。…いいの? …うれしい♪」(親愛度1000)
普通の言葉に戻すと「帰り道は暗くてちょっと怖いから、手をつなぎたいです」になる。topicは「帰り道」で主語は「杏奈」なのに「は」の省略が起きているので、これは規定1の例外にあたる。また、「を」を省略した部分に読点が入っているので、これも杏奈語的省略である。これは規定4の例外にあたる。
このように、親愛度が高めであると考えられる台詞では、四つの規定よりもさらに広い範囲で杏奈語的省略が行われるようになる。
「ふわふわしてて…かわいいケーキ…。杏奈、こういうの…好き。プロデューサーさんも、一緒に食べるよね…? …プロデューサーさんの分、杏奈、取ってあげる…。杏奈の分は…プロデューサーさん、食べさせて、ね…?」(誕生日2016)
普通の言葉に戻すと「プロデューサーさんの分は杏奈が取ってあげる。杏奈の分はプロデューサーさんが食べさせてね?」になる。これは規定2の例外にあたる。
「えっと……、道、迷わないように……、手、ぎゅってしてい……ぃ…?」(親愛度400)
規定3で引用した台詞である。普通の言葉に戻すと「えっと、道に迷わないように、手をぎゅってしていい?」になる。これは規定3の例外にあたる。
「杏奈…ダンスの振りつけ…考えてみたよ…。プロデューサーさん、見て…ほしい、な…」(親愛度700)
「杏奈、今日のお仕事…すごく楽しみにしてたよ。だ、だから…早く行こ…プロデューサーさん。」(親愛度600)
実はどちらも規定1で引用した台詞である。後半部分には親愛度が高めの台詞が続くことを思えば、その前置きである前半部分でRule2による杏奈語的省略が行われるのは自然である。これは規定4の例外にあたる。
また、一つ目の文章は規定3の例外でもある。
「プロデューサーさん、隣に座っていい? …ん、と……。杏奈、ココロの充電…ぴと。」(親愛度1000)
Rule2は「親愛度が高めの台詞では助詞の省略が加速する」というルールだったが、行きつくところまで行くと「杏奈、ココロの充電…ぴと」というもはや品詞分解不能な文章になる。
杏奈語的省略はどういうときに起きる?
さて、まとめに入ります。
規定1から規定4で述べたことを踏まえれば、親愛度の高低が絡んでこない台詞に限れば、杏奈語的省略を認めたのは規定1のみでした。つまり、常日頃から行われている杏奈語的省略は、topicと主語が一致する場合の「は」の省略のみです。
Rule2の節では、四つの規定を超えて杏奈語的省略が行われることを確認しました。
前者を広義の杏奈語的省略、後者を狭義の杏奈語的省略とします。
まとめるとこうなります。
・結論
①広義の杏奈語的省略は常に行われ、助詞「は」に対してのみ作用する。
②狭義の杏奈語的省略は「対象への好意を伝える台詞を発する」ときに行われる。
とりあえず、このことにさえ気をつけていれば望月杏奈というキャラクターを頭の中で動かすことはできそうです。
めでたしめでたし。
Real
と、まあこんな風にまとめてきたわけですけれど、ここらでいくつかのカードテキストを引用してみましょう。いまの僕たちは杏奈語における省略を大体理解しているといっても過言ではないはずですので、テキストを一見しただけでも「ああ、これはあのパターンだな」というのが分かるはずです!
「…聞こえる、ね…全国の…みんなの、声…。みんなの、想い…。…杏奈…これからも、頑張る…から…。…応援…、よろしく、ね…!」(「BELIEVE MY DREAM 望月杏奈」カードテキスト)
「…雨も、バスの待ち時間も…杏奈、好き、だよ。こうやって…ゲームで、みんなとお話するの。 …プロデューサーさんも、一緒に…チャット、しよ…?」(「雨でもコンティニュー 望月杏奈」カードテキスト)
「コート…すごく、あったかい、ね…♪ もふもふ、してて…ぎゅってすると、ぽかぽか…する…。…杏奈…、この服、好き、かも…♪」(「もふもふコート 望月杏奈」カードテキスト)
「…あ、杏奈…生身だと、HP…少ない…から…。…運動は…得意じゃない、です…。でも…スポーツの秋、だから…………頑張る…!」(「ミリオンオータムフェア 望月杏奈」カードテキスト)
……?
…………。
……………………??
なで?
ゲーム内のテキストとカードテキストとで、読点および三点リーダの数が圧倒的に違うんだけど……。どぼじて……?
一つ取り出してみましょう。
「コート…すごく、あったかい、ね…♪ もふもふ、してて…ぎゅってすると、ぽかぽか…する…。…杏奈…、この服、好き、かも…♪」(「もふもふコート 望月杏奈」カードテキスト)
普通の言葉に戻すと以下のようになります。
「(この)コートはすごくあったかいね。もふもふしてて、ぎゅってするとぽかぽかする。杏奈はこの服が好きかも」
一つ目の「は」の省略はtopicと主語が「コート」で一致しているので規定1に反しません。
二つ目の「は」の省略もtopicと主語が「杏奈」で一致するので問題ないですね。
最後の「が」の省略は規定2でも触れた一般的な省略です(「朝明の月 望月杏奈」のカードテキストです)。
ああ、何だ。問題ないじゃん! ちゃんと分かった!
って思うじゃないですか。
でも、駄目なんですよ。何が駄目かって?
こういう問題を考えてみましょう。
問:次の日本語を杏奈語訳しなさい(30点)
「このコートはすごくあったかいですね。もふもふしていて、ぎゅっとするとぽかぽかします。私はこの服が好きかもしれません」
とりあえず堅苦しい問題文を杏奈の言葉へ言い換えます。
「このコートはすごくあったかいね。もふもふしてて、ぎゅってするとぽかぽかする。杏奈はこの服が好きかも」
これくらいなら杏奈の台詞をいくつか読み込めば書けるようになると思うんですよ。しかし、それだけでは足りません。これを完全な杏奈語へ訳す必要があります。
では、実際に訳してみましょう。
まず広義の杏奈語的省略の法則に従います。すると、次のようになりますね。
「このコート、すごくあったかいね。もふもふしてて、ぎゅってするとぽかぽかする。杏奈、この服が好きかも」
次にこの台詞が「対象への好意を伝える台詞」かどうかを考えます。
まあ、違いますよね。
以上により、先の問題の答えはこうなります!
答:「このコート、すごくあったかいね。もふもふしてて、ぎゅってするとぽかぽかする。杏奈、この服が好きかも」
よっしゃ、百点満点の解答ができたぜ!
答え合わせしてみるか~。まあどうせ満点だろうけど笑。
えーっと、どれどれ……?
解:「(この)コート…すごく、あったかい、ね…♪ もふもふ、してて…ぎゅってすると、ぽかぽか…する…。…杏奈…、この服、好き、かも…♪」
なで?
どうすか、これ。
せいぜいもらえてお情けの1点くらいですよ。30点満点中の1点。浪人確定。鬱病。
そうなんですよ。
当たり前っちゃ当たり前なんですけれど、完璧な杏奈語を書こうと思ったら、杏奈語的省略の解釈だけじゃなく、杏奈語における読点および三点リーダの意味の解釈も必要になってくるんですよね。
「このコート…すごく、あったかい…ね。もふもふ…してて、ぎゅってすると…ぽかぽかする。杏奈…この服が、好き、かも…」
まあ書こうと思えば上ぐらいの台詞は書けるわけですよ。公式のと比べるとやっぱり見劣りはしますけど。たとえば、杏奈は「ね」や「してて(する)」の直前に読点および三点リーダを入れる傾向があるだとか、頭の中で再生してみて、夏川椎菜さんが望月杏奈の台詞を読んでいるときの感覚(間隔)にどれだけ近いかとか、そういうことを考えながら書けば。絶対に落としてはいけない杏奈語的省略(この場合は「は」のみを省略し読点や三点リーダを挟むこと)さえ拾っていれば、あとは感覚でやっても何とかそれっぽく見えるみたいなところはあります。ぶっちゃけ。
「…聞こえる、ね…全国の…みんなの、声…。みんなの、想い…。…杏奈…これからも、頑張る…から…。…応援…、よろしく、ね…!」(「BELIEVE MY DREAM 望月杏奈」カードテキスト)
でも、これはちょっと無理ですね。
ここでチェス盤をひっくり返すぜ
ここまでの話で完璧な杏奈語を作るのはまあ無理そうだなということが分かりました。
じゃあ杏奈のSS書くのは諦めるのかって話です。
答えはノーですよね。だって書きたいし。
そういうわけで、開き直ります。
そもそもカードテキストに比べてゲーム内テキストの方が読点や三点リーダが少ないという話を思い出しましょう。その理由を考えます。考えなくても分かりそうなもんですけど、考えるフリをします。……はい、もう分かりましたよね。
単純に読みにくいんですよ。読点と三点リーダが過剰に入った文章って。
それをテキスト主体のゲームでやるのはどないやねんって話ですね。あとは単に文字数を食うからというのもあるでしょうけれど、手軽さが求められるタイプのあのゲームで、ちゃんと読まないといけないようなテキストをメインで展開するわけにはいかないでしょう。カードテキストだと読点と三点リーダが多いのは、あちらは読もうと思っている人しか読まないからだと思います、多分(初期の台詞も三点リーダが大量にあったが、あれにはテキストと別にボイス版があった)。
開き直るというのはそういう意味で、完璧な杏奈語が書けないのなら、完璧じゃない杏奈語でもいいじゃない、って話です。だって僕らが書きたいのは、SSだから。完璧さよりも読みやすさを追求しましたって建前で、不完全な杏奈語に甘んじましょう。いや、甘んずるって言い方は良くないですね。望月杏奈という人格への理解を放棄したわけでは決してないんですよ、勘違いされそうですけど。何というか、致命的に間違えちゃいけない部分(杏奈語的省略)さえ正しくこなせれば、SSを書く上ではそんなに気にする必要ないんじゃないかなあ、と思った次第です(だから? って感じではある)。何かよく分からないところに落ち着いちゃったな。
まとめ
「あのね」がめちゃくちゃ多い(OFF杏奈)。
「ネトゲ」って言うんだな(OFF杏奈)。
文末の「しよ」「したい」「ね」の前には読点か三点リーダがほぼ確実に入る(OFF杏奈)。後ろにも入る。
文末でとってつけたように「…です」「、です…」と言うことがある(OFF杏奈)。
OFF杏奈ばっかり。
ちなみに、僕が一番好きなカードテキストは
「杏奈、小さいころ「ヘンゼルとグレーテル」に出てくるお菓子の家に、すっごくあこがれてたの…! このおっきなロリポップ、どこに飾ろうかな!?」(「ショコラハウス 望月杏奈」カードテキスト)
です。
みんなも杏奈のSSを書こうね。僕まだ書いてないけど。